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論田・熊無藤箕づくり技術保存会について

論田・熊無藤箕づくり技術保存会は、当時、氷見市農協の双光支所管内選出の理事であった上出篤美氏が発起人となり、氷見市西部にある論田と熊無という隣り合う集落に伝承されてきた藤箕製作技術の保存と継承を目的として2012年に設立されました。

保存会では、地元の小学校での体験学習を行うなど、普及啓発に努めながら、新たな担い手の育成を図り、技術を末永く伝えていく活動をしています。

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ただ実直に、
600年受け継がれてきた技術を磨く

論田・熊無藤箕づくり技術保存会
会長 坂口 忠範

氷見市論田・熊無地区においての藤箕生産は、およそ600年前に天台僧により伝わったといわれています。かつては論田・熊無地区のほとんどの世帯において作られていましたが、2024年現在では、その技術を継承している人は少なくなりました。

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藤箕製作について

父から藤箕作りを教わったのは、私がまだ10代の頃です。当時は熊無・論田地区でも藤箕を作る家庭は多く、どこの家庭でも子世代へ藤箕の技術を継承していました。

20歳の時、就職を機に藤箕作りから離れてしまいましたが、定年退職後、地域で藤箕の技術を持つ人が少なくなったことを知り、後継者として製作を再開しました。
今年78歳となり、藤箕作りを始めてから約20年が経ちますが、いまだに完璧な作品と呼べるものには出会えていません。きっと自分の藤箕の出来映えに満足してしまったら、それ以上の成長はないと思います。
これまで製作に携わった人たちも今の私と同様に、もっと良いものを作りたいという追求心を持って取り組んできたのでしょう。その追求心が、600年もの間継承される技術を作り上げたのだと思います。
ただ習ったことだけを繰り返していては、600年もの間技術を受け継ぐことはできません。その時の気候や、山の環境や、生活スタイルに合わせて微調整して作り上げてきた技術だと考えています。

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無我の境地で作る

藤箕作りをしていて、特別辛いと思ったことはありません。楽しいと思ったこともありません。ただただ、無我の境地で作業をしています。
それは、なにかを考えながら製作すると必ず失敗するからです。製作中は、いわゆる瞑想状態です。自然を感じ、自然と一体になって、無心になって作ります。集中しているときは話をするのも忘れてしまうほどです。
論田・熊無での生活のすべてが、藤箕作りに役立っています。製作する前に、どのような場面で藤箕を使うのか想像します。どのように作られていれば、使う側は使いやすいのかと細かく想像を巡らせます。また、一番最初の編み目を作るときには一番神経を使います。ここを失敗すると、使い物にならないのです。

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山と環境の変化

昔は藤箕を作る為に山に入ることを皆歓迎しました。藤は樹木の根元に巻き付きながら生えてきます。そのままにしておくと根元を締め上げて樹木が傷んでしまうのです。最悪、根を枯らしたり、倒れてしまうこともあります。そういったことから、藤によって真っ直ぐな木材が採れなくなるため、嫌がられたものです。つまり藤を採ることは山の中の整理整頓でもありました。
今は山に入る人が少なくなりました。藤箕自体を知らない世帯も増えました。樹齢の過ぎた太い木ばかりが増え、採集に適した時期を過ぎた藤は渦を巻いています。
山の持ち主の価値観も変化しました。私有地に入って藤の採集作業をすることに戸惑いがあったり、拒絶する人も多いです。だからといって、自分で山の環境を整えるわけではないのです。そんな場所がどんどん増えてきています。
昔は論田・熊無でも350世帯が藤箕を生産していたにもかかわらず、必要な材料は全世帯に足りていました。今は足りません。それは、新しい木も藤も育っていないからです。山の中の新陳代謝が行われていないのです。
山が荒れれば、平野の環境も合わせて荒れていくでしょう。氷見には豊かな海がありますが、その海もこの山と繋がっています。このまま山が荒れていけば、いずれは海まで影響が出るでしょう。
山に入り日用の道具を作り、それを使い生活することが、地域全体の環境を調整することに繋がっているということを、もっと多くの人に知ってほしいと思います。

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自然を愛する人、自然と一体になりたい人に技術を繋ぎたい

藤を採るために山に入ります。暑い中、湧き水を汲んで飲んでいるときは最高の気分です。秋はアケビを採ってその場で食べます。採集の際に山の恵みをいただくことを、本当に楽しみにしています。

藤箕の技術はたまに習う程度では、なかなか上達しないと思います。論田・熊無で送る日々の生活の中で得た気づきを生かしながら、毎日材料に触れることで段々とコツが掴めてきます。藤箕を使い、作ることが日常になっている人は上達しやすいと思います。

だからこそ、理想は論田・熊無地区の中で生活しながら技術を習得してくれる人が増えてほしいと考えています。

-無我の境地で藤箕を作り、自然を愛し、自然とひとつになりながら暮らす。

こんな生活を素晴らしいと思ってくれる人にはぜひ体験してほしいと思います。まずは論田・熊無地区を訪れ、藤箕に触れてみてください。

主な活動内容

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お問い合わせ

論田・熊無の藤箕製作技術に関するご質問、取材のご依頼、見学会や体験会のお申し込みはこちらからお願いいたします。

© 2023 論田・熊無藤箕づくり技術保存会

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