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後継者
インタビュー
吉野 樹理
移住のきっかけ
仕事に行き詰まりを感じて、自分は本当は何をしたいんだろうと3年ほど自問自答をしていました。答えを探しに色々な人の話を聞いているうちにある本と出会い、「お金に囚われることなく、自分の生きる力を高めたい」と思うようになりました。そして、「自分で作ったお米に、自分で作った納豆をかけて食べたい」という夢を持つようになりました。
ちょうど時期を同じくして、SNSを通じて氷見へ来る機会がありました。ご縁が繋がり、畑を貸してもらいました。今は氷見に住まいを移し、米作りにも取り組んでいます。米作りはもう3年目になります。
今年は自分で作った稲藁を使って、いただいた大豆で納豆作りに挑戦しました。次は大豆も自分で作りたいです。論田・熊無の地域の皆さんにはいつもお世話になっているので、自分なりにお返しできたらなと思っています。
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藤箕の技術を継承することの重要性
移住のきっかけをくれた友人から、藤箕というものがあることを教えてもらいました。600年もの間受け継がれてきた技術が途絶えそうになっていることを知り、やってみたいと思いました。これで坂口会長から習い始めて3年目になります。まだまだ、納得のいくものは作れませんが、もっともっと上達したいと学びを深める毎日です。
箕は全国各地で作られていますが、氷見の藤箕は使い手のことを考えて様々な工夫がなされています。例えば、藤箕の先端部分は一番傷みやすいのですが、強度を高めるために桜の木の皮をあしらっています。見た目のアクセントにもなる素晴らしい工夫です。
藤と竹を組み合わせることで、箕はしなりを持ちながらも丈夫に仕上がります。見た目の美しさだけでなく、実用性も兼ね備えた作りといえます。これらの工夫によって、氷見の藤箕は、北海道のジャガイモ農家でも愛用されています。
北海道の厳しい気候でもプラスチック製の箕のように割れることがありません。手入れをして使うことで、何十年と使うことができます。
こんな素晴らしい技術を私たちの代で途絶えさせてしまうのは、実にもったいない話です。藤箕作りの技術を、ぜひたくさんの人に学んでほしいと思います。
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美谷 恭子
人間は自然の一部であることを忘れてはいけない
プライベートで、家族が食べる分だけですが自然農による米作りをしています。私は、人間は自然の一部であると考えています。田畑を耕すときも、藤箕作りの材料を頂くために山に入るときも、畏敬の念を持って自然と接するよう心がけています。
坂口会長から教わった「来年のために場をきれいにする」という考え方があります。太くなった藤を整理することで、若く芽吹いた藤が育ち、より良い藤箕を作ることができます。
山仕事を生業とする人が減り、氷見の里山でも手つかずの荒れた場所が増えたと聞きます。現状、私たちが藤箕を作るために山に入ることだけでは、氷見の里山の環境を整えるまでには至っていないかもしれません。私たち人間が里山へ与えられる影響はとても小さなものですが、それでも藤箕を作り、里山の環境を良くしたいと思う仲間が増えてくれたら嬉しいです。
子どもたちへ藤箕の素晴らしさを教えたい
藤箕は使いやすく見た目が美しいということはもちろん、カビが生えるなどして使えなくなったとしても、いずれは土に還る持続可能な道具です。私は藤箕が作られてきた背景も含めて、藤箕製作を次の世代に知ってもらうことはとても重要なことと捉えています。
藤箕作りは子どもたちにとっては楽しい体験のようです。以前小学校低学年の女の子が体験に参加してくれました。一段目を編むときには要領が掴めず戸惑っていましたが、無心になって集中し、二段目を作り終えたときには笑顔が見えていました。
スマホに向かう時間が増えている現代の子どもたちにとって、自然の中で手を動かし、何かを作り上げる経験は、創造性や集中力を養う上でとても大切です。藤箕を作る過程で感じる、自然素材の温もりや、完成した時の達成感は、きっと子どもたちの心に深く残るでしょう。
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重田 信佑
言葉では語り尽くせないもの
地域おこし協力隊の活動をきっかけに移住してきました。これまで、様々な地域を訪れ、各地の伝統技術に触れてきましたが、論田・熊無の藤箕の技術を知り、製作してみたいと思い、坂口会長から教わっています。
私は民俗学を学ぶことをライフワークとしています。学びを深める中で、私は「言葉だけでは語り尽くせない何か」があることに気づきました。それは自ら手を動かし、伝統技術を体験することで得られる感動です。
藤箕作りは、単なる道具作りにとどまらず、論田・熊無の生活と深く結びついています。技術を学ぶ中で、この論田・熊無という地域への理解が深まっていきます。
藤箕作りを学ぶ前は、600年もの間技術を継承し磨き続けてきた過程で、楽をしようと作業の簡略化を試みた人はいないのかと疑問でした。技術がここまで受け継がれてきたのは、実直に藤箕を作ることで里山の環境が保たれ、結果的に自然の恵みを享受できるということに、論田・熊無の人々は気づいていたからです。
藤箕を広めたい
例えばインドネシアのバリ島では、農作業に勤しむ人の姿自体が観光資源となっています。この地域に住む人は、外から見たこの地域の魅力に気づいていません。藤箕を作り、稲作をする人々の姿は大切なこの地域の宝物です。
藤箕を作る人が減っている今、藤箕の素晴らしさが内外に広まってくれたらと思います。まずは、この地域を愛する作り手を増やしていくことが大切なのではないでしょうか。
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柄澤 美香
藤箕の素晴らしさを知らないなんてもったいない
今では地元の方でさえ、藤箕を知らなかったり、使ったことがないというケースが多いです。藤箕の素晴らしさを知らないなんてもったいないと思います。藤箕は手入れ次第で40年、50年と使えます。作ったばかりの藤箕は青々としていますが、1、2年もたつと飴色になってきます。使い込むと毛羽立ちがなくなり、より編み目が詰まってきます。
濡れた葉や草をたくさん乗せた後は、軒下に吊して陰干しをします。外に出しておいてもプラスチック製の箕のように劣化して割れることはありません。見た目も風情があって素晴らしいです。
おすすめの使い方は、刈った草や落ち葉の運搬です。また、ジャガイモなどを運ぶ際も芋が傷つきませんし、薪ストーブの炭を運ぶのにもたわまず運ぶことができておすすめです。大体10㎏くらいのものを運ぶことができます。
家庭菜園を自宅で楽しんでいる人は、毎日手に取る道具にもこだわりたいのではないでしょうか?使っているだけで豊かな気持ちになれる藤箕を、ぜひたくさんの人に知ってもらいたいです。
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![柄澤さん3.jpg](https://static.wixstatic.com/media/34d243_c543c027251340f597bd5c0b33c9a3bb~mv2.jpg/v1/fill/w_281,h_211,al_c,q_80,usm_0.66_1.00_0.01,enc_avif,quality_auto/34d243_c543c027251340f597bd5c0b33c9a3bb~mv2.jpg)
自然の変化に目をこらす毎日
藤箕作りの材料の採集は、天気や温度、湿度に気を配りながら行います。採集してきてからも、すぐに使い始めることはできません。どこで採ったか、何年目のものを採ったか、真っ直ぐ伸びていたものかどうか・・・一つ一つの材料をじっくり見ながら、乾燥の時間を決めたり、加工する際に微調整したりと気が抜けません。
乾燥させて使えるようになってからも、編み込む作業をするときの気候、湿度など常に気を配る必要があります。それは自然との対話のようなものです。材料の細部まで目をこらして、製作します。
昔は藤を採る人が多かったので、山の中も藪だらけではなかったようですし、真っ直ぐに伸びた加工のしやすい藤がたくさん生えていました。虫害も最近は起こっています。山の中の生態系の変化でしょうか。このまま藤を採る人がいなくなったら、もっと山の中の状況は変わっていくでしょう。
藤箕作りを学び始めて5年になります。技術を継承していくということに難しさを感じることもあります。地元のこんなに素晴らしい伝統技術が、次の世代に引き継がれないのは残念なことです。藤箕を作る仲間がもっと増えたら良いなと思います。